真実の夢

2017.7.31 UP DATE

真実の夢
この世は大きく分けて二つの事に分けられている。
白と黒。太陽と月。男と女。
成功と失敗。裕福と貧困。この様にキリがないほどに上と下、右と左とで分かれている。

夜明けと共に目が覚めた。寝惚けた体を起こして、カーテンを開けると黄金の光が視界を覆った。一瞬真っ白の世界になって徐々に目が慣れて今日という世界を見ていた。
いつもなら今日の様に太陽が登ろうとする日、雨の日より清々しい一日が始められるのだが、雨の日は、個人的意見だが晴れた日より気持ちが落ち込む。
なのに、この晴れた今日という日のそんな中でも理不尽な僕の感情は、不安定になっていた。
歯を磨こうと洗面台に行く途中、ふとカレンダーに目をやった、山登りに参加出来る日。と記してあった。そう言えば、以前、知り合いの叔父さんに山登りはいいぞ!てお会いする度に何度も話してくれていたなぁ。歯磨きをしてる最中も、その山登りの日が頭から離れなくなっていた。後で、電話してみるか。僕はそう決意し服を着替えて、外出する準備をした。
もしもし、お早うございます。あの、以前話していた山登りの事なのですが?
おうおう、ようかけて来てくれたなぁ。
(電話中)
じゃあ、その時間で行かせてもらいます。失礼します。

こうして僕は気分転換の為に知り合いの御老人夫婦の主催する山登りに参加することになった。
僕の一日の始まりを襲った不安定な感情はこの山登りの参加によって本当に救われる事になるのだった。

※この物語は弘jr.の心の中のフィクションです。
どうぞ小説風blogをお楽しみ下さい。

集合時間と場所を聞いていたので着いた頃には、山の麓の広場に僕含め7名集まっていた。
僕以外全ての方が70歳を過ぎた人生の大先輩方ばかりだった。皆んなニコニコと良い顔をしている。朝の山には、言葉にならない澄んだ空気が満ちていた。
その時から僕は不思議とその空間に飲み込まれ始めているのが分かった。
不安定だった心の傾きが変わろうとしていたからだ。不安定な状態から安心という優しい感情に変化し始めていた。
その時に、おーい皆んなこっち集まって輪になってやぁ。と叔父さんの一言で今日の山登りの行程プランを叔父さんを中心に話し合った。
地図を広げて、A地点、B地点、C地点までの道程を立てて、出発しだした。
皆んなはリュックと杖を持っていた。
僕は初めての参加で用意するものすら解ってなかったから、手ブラ状態での参加になった。山登りを決して軽視していた訳ではない。ただ僕は何かに導かれる様な気持ちが参加する決意となっただけだった。
歩き初めは砂利の滑らかな坂道だった。
一列に並んで歩く隊列の僕はその一番後方に位置をした。僕の視界には両サイド木々に囲まれた道と、前を歩く御老人達がニコニコ話しながら歩く姿がそこにあった。
初めのうちはゆるい坂の山道だった。砂利道の途中に山間に入るポイントがあり、前を歩く人達が一人一人山の中に入っていく。
その時僕は何ともアドベンチャーな気分になったのを覚えている。熊がいるわけも無いのに、熊がいるのでは無いか?という好奇心と怖さが僕の心を賑わせていた。冒険と言う表現がこの時一番相応しく思えた。
熊がいるのでは?と思ったのは御老人の1人がリュックに鈴を付けていたからだった。

凛々。
凛々。
凛々。

と響く心地いい音色が僕らを何かから守り包んでるかの様に思えた。
山の中に入り10分くらい歩いていた、足元はジメッと湿気が多く、真夏だというのに山の中は澄んだ空気で冷んやりと涼しかった。日陰の世界ではあったが、所々木漏れ日が差してる場所もあった。太陽の光が空から木の間を通る筋を見てると何とも美しく神々しさすら感じずには居られなかった。
一筋の太陽の光が足元の野花に射してるのを見て僕は思った。この花は日陰の中にいて太陽の射す光が自分を照らす位置に来る時まで何も言わず待ち、真っ直ぐに向かって伸びている。どんな環境にあっても美しい姿でいてくれている花に、感謝と無言の学びを感じずにはいられなかった。日ごろ僕が生活している世の中には地に咲く野花の光景を見てもそんな感情になりにくい。心にゆとりが取れないほど日常は目紛しく回っているからだろう。僕なんて大した日常ではないが、ビルや、アスファルトばかりの世界から自然の学びを感じる事は難しい。こういった人の手が入り込み過ぎてない場所に来るからこそ改めて素晴らしいと思える光景があり、自然というのは人に大切な事を静かに教えてるのだなぁ。と感心していた。
そんな事を色々考えながら黙々と歩いた。どれくらい歩いただろうか、かなりの時間歩いた気がする。太陽が丁度真上に指そうとしていたからお昼前かなと思っていた時、
叔父さんが、おーい皆んな、あそこの小川が流れてる横に休憩できるポイントがあるから、そこで一息しましょう。
と皆んなに合図をしてくれた。
休憩ポイントに着きそれぞれ腰を下ろし一人掛けのビニールシートを敷く人、丁度良い大きさの岩に腰を下ろす人、皆んなが個々に座る場所を見つけ適当な会話をし一息をついた。皆んな良い汗をかいていた。
ここがA地点で手ブラで来た僕は小川の近くで腰を下ろした。皆んなより僕の方が倍ほど若いが、皆んなの方が体力があるのだなぁ、と思った。
皆んな始め来た時と変わらない表情だったのでその体力に驚いた。何故なら僕は少し足が疲れていたし途中息も少し切れた場面もあったからだ。
その時叔父さんから喉乾いたやろ?と声をかけられた。このペットボトルあげるから、小川からコレに水汲んで飲んでみ?と言われた。
えっ!?僕は驚いた。単純に飲んで大丈夫なのか?という思いを隠せなかったからだ。そんな僕を見て叔父さんは笑って、ペットボトルを差し出した。良いから飲んでみ。と笑顔で優しく言ってくれた。
何一つ疑う余地のないその笑顔は、僕を素直にさせていた。
小川に近付いて、ペットボトルに水を汲んで、叔父さんに尋ねた。このまま飲むのですか?叔父さんは、笑顔で黙ったまま僕に向かって頷いた。
僕は少し恐る恐る小川の水を入れたペットボトルに口を付けて、ゴクっと飲んだ。冷たかった、美味しかった、何て言えばいいのだろう?本当の真水の味がした。何の臭みもなく、透き通った味というのか、難しい表現になるが、心の曇りが洗い流される様な不思議な感覚と自然の味がした。
美味しかったから僕はその水をゴクゴク飲んだ。水を沢山飲んだから、案の定僕はトイレがしたくなった。うわー、
でも皆んなトイレどうするのかなぁ?と思って叔父さんに聞いて見たら、B地点まで行けば仮設トイレがあるが間に合わなくなった時は仕方ない。お山にさせて貰い。木陰に行って山の神様にごめんなさい!しておいで。って言ってくれた。
その時僕は、自分の小さかった頃を思い出していた。昔、お婆ちゃんが居た頃、その叔父さんと同じ事を言って教えてくれたなぁ。懐かしかったのと忘れかけてた大切な感情だなぁって、何度もトイレをしてる時も自分の中で往復していた。トイレを外でする事は少し下品な感覚だが、するその人の心はどうなのか?がとても重要に思えた。だからこそ、ごめんなさい。が最低必要な想いだ。
忘れてはならない一つだと思った。
A地点で少しゆっくりとして次にB地点へと向かう。この距離はあまり離れていないみたいだった。
このA地点での休憩は、小川のせせらぎと、自然の中の澄んだ水は飲めるよ。と教えてくれる時間だった。僕はもう一つここで大切な事を学んだ。何をするにもその人の心掛けが大切だと言う事を。。。

さぁ、B地点目指して行くか!と叔父さんが皆んなに合図をした。
合図を聞いて腰をあげる時、何故だかいつもより軽さを感じていた。心が軽くなっていたのか不思議な感覚だった。僕の昔からの受け売りの持論があって、起こる不思議な事に対して議論する事も思う事も不必要である。そのままを受け入れなさいがというのが不思議と言う言葉だった。
B地点へ歩く道中、僕は一つの事を考えていた。それは、今朝に目覚めて自分の心が不安定であった事についてだった。
何故、僕は不安定になる今朝を迎える事になったのか?原因と結果を頭の中でひたすら追求していた。

昨日の事だった大学に通っていた僕は、大学の友人何人かと夕食をしていた、お酒を飲んでも良い歳を過ぎていたので、それぞれにお酒を飲みながら、あーでもない、こーでもないと未来の就職や目標などについて話していた。始めはなんら変わりのないいつもの事だった。
そして不安定の気持ちが起こるきっかけとなった事があった。それは、大学に通う僕たちの中で大学に行かせて貰ってる人達と、何とか自分で大学に行ってる人の事で話が話題に出た時だった。
後者の方だった僕は、自分なりの考えがあったのと、家庭環境の問題があったから自力で行く事が当然であり、それが普通であった。何も行かせて貰ってる人達に嫉妬もなければ怒りも当然なかった。
お酒の席で僕が言われたのはこうだった。
友人の中のある一人がこう言った、
俺たちは皆んな何かしら誰かに世話になってるから、お前も世話になってる事を認めて、この際誰かに世話になったらいいやん。
いつまでもカッコつけてないでさ!と言葉を投げられた。
僕は心が小さかったのだろう、なんとも言えない腹立たしさを覚えたのは、
そのいつまでもカッコつけてないで!の言葉に凄く腹が立った。家庭環境の全ても知らずに、その言われよう。
カッコつけて?誰も好き好んで必死を選んだ訳じゃない!と言う思いが爆発し投げかけてきた友人と討論と言うか、僕が感情的に声を荒げてしまった。
お前に何がわかる?どんな気持ちで俺が居てるかなんて分からん癖に軽々しく言うな!お前と食う飯も酒も、クソ不味くなる。と言って僕は店を一人出たのだった。すぐに電話がかかっていたが僕は無視をした。出たくなかった。出られる心境ではなかったから。
そのまま僕は一直線に帰ってイライラしながらベッドで横たわり天井を眺めていた。携帯はサイレントにしていた。
イライラを抱えながらその内に知らん間に寝ていた。そして起きた朝が今日だった。
そんな事を思い返しながら山道を歩き続けていた。
よくよく考えれば自分の環境なんて、人が全てを知る事なんて無理な話だ。
昨日、僕に言った友人も悪気があってではなかったのだろう。
不安定を起こすのは自分の心が調和していない証拠。カッコつけたいと言う気持ちがなくとも、自分はこうやって人より頑張ってる。と言う気持ちが相手の言いたい本質を知るどころか自分は人より努力してると言う傲慢に似た想いが、今回の怒りを生んだのかも知れないな。と思えてきた。何をするにもその人の心次第だと、ついさっき自然から教えて貰った想い。僕の気持ちにも問題があったのだろうなぁ。外でトイレをしなければならない時には、ごめんなさい。と心から思う事であったり、そこから学べば今朝に抱いた不安定な心の問題を切り離すのは単純な事の様に思えた。
昨日はごめんな。って、素直に言えれば不安定が自分に宿る滞在期間なんて短くて済む。そして友達ともまた調和する。
あの野花にも教えて貰った。
ずっと日陰にいると言う自分の環境下であっても、太陽が射す時には最大に伸び伸びと美しくいてる事。日陰にいても、いつもその心を持っていれば、太陽が射す時も決して変わらぬ様であると言う事。
良い時に人は皆んな良い心や、良い言葉を話せる。しかし、不安定の時や、悪環境の中にある時は間違った感情が生まれやすい。日向も日陰も、出来るだけ同じ様でありたい。一つの心でありたいなぁ。

僕はその日、何かが自分の中で大きく変わろうとしていた。
その時、前を歩く人のリュックから聴こえてきた。

凛々。
凛々。
凛々。

耳をそれ一点に集中させていた。
心地良いなぁ。

リンリン。
リンリン。
リンリン。

僕はベッドの上にいた。目が覚めた。
ぼーっと天井を見つめていた。

僕は夢を見ていたのだった…

携帯を見た。友達からの電話が何度も鳴っていた履歴があった。
目覚めた時僕は、既に心の不安定と共にいなかった。
夢であっても真実を教えられた夢やったなぁ。

さぁ今日、友達に電話して言わないと。

『昨日はごめんな。』

人生には良いと悪いとがいつもいつも隣り合わせにいる事を考えて、真っ直ぐに生きる事が大切である。
右と左という人生のどちらにあっても本質は変わらない様であれれば良いなぁ。

DRESS RECORDS / Increase – HIROM Jr.

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